PRP(自己多血小板血漿)についての情報開示
2008年9月9日
PRP(自己多血小板血漿)注入による、老化皮膚の若返り治療は、世界に先駆け、当院で2005年に開始した治療で、これまで国内はもとより、世界に向けてその治療法を発信してまいりました。
しかしながら、当初の私たちの思惑とは異なり、間違った使用法や報告、さらには非常にコントロールしにくい危険な物質を混合し注射するという方法まで出てきました。これは大変に危惧されるべき状況です。
そこで、当研究会ではこれから随時PRP注入治療を受けられる患者さまのためにPRP注入治療の現状に関する全ての情報を開示してまいります。
- 開示情報(1)
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最近、他社のPRPキットを使用した治療で、あたかも作製できるPRPに白血球を特別に添加したかのような記述や報告が見受けられますが、本来PRP作製時には白血球は当然含まれるものであり、後から添加するものではありません。
当然当院で使用しているキットで作製したPRPにも白血球が含まれます。
但し、PRPに白血球が含まれた方が良いのか、否か、また、含まれた方が良い場合の至適濃度などについては現在のところ結論がでていません。
慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法部での実験結果では、白血球を含有しているとする米国某社キットで作製したPRPは血小板の分離が不十分で、報告されているような血小板濃度が得られないことが判明しています(比較結果は以下の表参照)。
また、2本のチューブを用いてPRPを作製する国産キットを使用した場合、当院におけるこれまでの実験では、注入に必要なPRPを作製することができませんでした(フィブリン糊の作製は可能です)。
ちなみにPRPの濃度については、破棄するPPPの量によってどのようにも濃縮することができます。
|
末梢血 |
リジェンPRPキット |
米国某社PRPキット |
Volume, ml |
8 |
2.4 |
2.5 |
WBC |
6200 |
7970 |
1880 |
RBC×104 |
504 |
3 |
1 |
Platelets×104 |
29.7 |
88.8 |
61.4 |
PLT Recovery |
- |
89.7% |
64.6% |
|
末梢血 |
リジェンPRPキット |
米国某社PRPキット |
Volume, ml |
8 |
2.1 |
2.3 |
WBC |
5400 |
7820 |
1620 |
RBC×104 |
504 |
6 |
1 |
Platelets×104 |
22.2 |
66.6 |
30.1 |
PLT Recovery |
- |
78.8% |
38.9% |
|
末梢血 |
リジェンPRPキット |
米国某社PRPキット |
Volume, ml |
8 |
2.4 |
2.3 |
WBC |
5700 |
4660 |
1700 |
RBC×104 |
422 |
4 |
4 |
Platelets×104 |
20.2 |
61.8 |
55.5 |
PLT Recovery |
- |
91.8% |
78.9% |
比較測定より抜粋:
慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法部 半田誠先生より提供(2008年8月28日) |
- 開示情報(2)
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上記の内容に加えて、PRPにフィブラスト(科研製薬)と呼ばれるbFGF(線維芽細胞増殖因子)を添加し、注入する方法をとっている施設があるようですが、これは厚生労働省が認めたフィブラストの使用方法を全く逸脱したもので、非常に危険です。
PRP+bFGFを目の下、前額や頬に注入され予期せぬしこりやコブができるという被害が多数報告されています(コブを皮下に作ってシワが伸びたと言っている)。
これは、bFGFによって皮下に異常瘢痕が形成されると考えられます。またPRPとbFGFの反応は結果予測が困難で、制御不能であります。
すなわち、これらの治療法を用いていると皮下に易出血性の肉芽組織が形成され過剰な瘢痕形成が起こる可能性が高いと考えられます。
これは皮膚の細胞自体を活性化し、老化予防を図っているのではありませんのでご注意ください。
- 開示情報(3)
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今後も本研究会では、PRP注入の本来の目的である、できるだけ余分なものを添加しない自己のPRPのみで若返りを図っていく方針です。
- 開示情報(4)
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PRP注入とボツリヌストキシン注射を併用した場合、ボツリヌストキシンは血小板活性を抑制する作用があるため、PRP治療の効果が低下する可能性があります。
このため、PRP注入治療を受けられる患者様は、同時にボトックス注射をお受けにならないように注意してください。
久保田潤一郎クリニック 院長
久保田 潤一郎